どうも!
オムツを真面目に考える男、「オムツマン」です。
本日は、最近、日本でも流行している「骨盤底筋トレーニング」って本当に効果があるか論文などから検討しよう。
Contents
骨盤底筋トレーニングとは?
1948年にkegelは骨盤底筋トレーニングが女性の尿失禁の治療に効果的であると初めて報告した(論文はこちら)。
まだ60年ほどの歴史しかない比較的新しいトレーニングといえる。
骨盤底筋群の解剖に関してはこちらから復習しよう。
当時は手術が第一選択であり、保存療法の優先順位は低かったが、今では骨盤底筋トレーニングが腹圧性尿失禁治療に限れば第一選択である(論文はこちら)。
どの種類の尿失禁にも効果があるわけではないが、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁に対しては、効果があると分かっている(上記の本から引用)。
井上倫恵先生の講義資料でも治療アプローチとして骨盤底筋トレーニングは切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁に対して、原則、骨盤底筋群の収縮が可能な方が適応となることがよく分かる。
尿失禁に対して骨盤底筋トレーニングはやらないよりはやったほうがいいが、「お尻をしめてー」だけでは効果がないことはお分かりだろう。収縮感覚の確認が大切だ。
リスクとして会陰部の痛みや仰臥位低血圧症候群などを引き起こす可能性もあるので覚えておこう。
どんな対象に骨盤底筋トレーニングは効果的なのか?
1:妊婦または産後の女性
推奨グレード:A (行うよう強く勧められる)
妊婦または産後に対する女性への骨盤底筋トレーニングは、尿失禁の予防効果がある。
日本は残念ながら遅れているが、欧米諸国、特にフランスでは、骨盤底に対する費用は保健適応で無料である。フランス語で骨盤帯をペリネと言い、ペリネケアという言葉は、国民は誰もが知っている。
当然ながら、保険適用で理学療法士、助産師が骨盤底筋トレーニングを指導する機会も多い。
治療の効果は多くの論文で報告されており、産前産後の女性へは間違いなく骨盤底筋トレーニングは効果的である。
2:高齢者
推奨グレード:?(おそらく低い)
高齢者に対する骨盤底筋トレーニングは正しい収縮指導ができればおそらく効果がある。
日本では高齢者が急増しており、60歳の2人に1人が失禁を有していることを考えると、これからますます高齢者に対する骨盤底筋トレーニングに対する期待は高まることが予想される。
高齢になるほど、骨盤底筋の収縮ができない方が多いので、若年者よりも効果が小さいことが予想できる。
しかし、仮説であるが、正しい収縮指導ができれば、高齢者でも十分な効果があると思われる。しかし、論文数が少ないので、今の段階で答えを出すのは早すぎる。
日本排尿機能学会のシンポジウムで大内みふか先生も言っていたが、骨盤底筋トレーニング単独での論文は少なく、全身エクササイズ、ADL訓練、トイレ誘導など統合して行っている報告が多い。
3:女性スポーツ選手
女性スポーツ選手への骨盤底筋トレーニングは症状改善に有効である。
体操選手、トランポリン、バスケットボール、バレーボールなど勢いのある着地を伴うスポーツは、女性にとって大敵である。
若い方に多いため、恥ずかしがってなかなか病院受診しないケースも多いと聞く。
若ければ、骨盤トレーニングに対する理解も高く効果も期待できるため、スポーツの指導者・両親も正しい知識を身につけておきたい。
骨盤底筋トレーニングの論文まとめ
【論文】妊婦または産後に対する女性
【論文】高齢者
The effect of pelvic floor muscle training in urinaryincontinent elderly women: a sistematic review.
Effects of physical therapy in older women with urinary incontinence: a systematic review.
【論文】女性スポーツ選手
骨盤底筋トレーニングに関する論文の問題点
これまでの骨盤底筋トレーニングの研究をみてみると、骨盤底筋を「収縮する能力」を評価していないことがある。
いくつかの報告で、30%以上の女性は初回の個別指導後、選択的に骨盤底筋を収縮できないと報告している(以下の本より引用)。
Hay-smith(2001)は、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、混合性尿失禁に対する骨盤底筋トレーニングのRCT43件のうち15件でしか、トレーニング開始前に骨盤底筋の収縮を確認していないと報告している(論文はこちら)。
骨盤底筋の代わりに、腹筋、殿筋、股関節内転筋のような筋肉を収縮させている。
また、Bump(1991)は25%の女性が正しい収縮の代わりに骨盤底筋を押し下げている可能性があると報告している(論文はこちら)。
つまり、井上先生の資料にもあるが、まずはしっかり骨盤底筋が正しく収縮できるか評価しないといけない。
ここまで読んでみて、いかにトレーニング前が重要か気づくだろう。
トレーニング前には、骨盤底筋と下部尿路の解剖やご自身での触診、正しい収縮指導が必要である。
そもそもどうして漏れる?(腹圧性尿失禁)
咳やくしゃみ、重いものを持つときにお腹に力が入る。腹圧が上昇するのだ。
正常であれば、腹圧により膀胱内圧は高くなるが、尿道への圧も高まるため、尿漏れはしない。では、なぜ漏れてしまうかというと、骨盤底筋群が緩んでしまうと膀胱頸部(尿道に繋がっている部分)や子宮自体が下がってしまい、腹圧の上昇が尿道に伝わりにくかったり、尿道がグラグラ動いてしまったり、尿道を締める尿道括約筋の働きが弱くなることで漏れてしまう。
切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁に対して、最も一般的に行われている理学療法は骨盤底筋トレーニングだが、その他にも、膣コーン、電気刺激療法、磁気刺激療法などがあることは知っておくべきである。最近では併用療法がスタンダードになりつつある。
まとめ
本日は、骨盤底筋トレーニングって本当に効果があるのか論文から検討した。
結果、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁に対しては、効果があると分かった。
対象は、産前産後の女性を基本とし、高齢者や女性スポーツ選手にも一部効果はあることが確認できた。
誰にでも非侵襲として選択しやすい骨盤底筋トレーニングだが、リスクに関しても会陰部の痛みや仰臥位低血圧症候群などを引き起こす可能性もあるので注意しよう。
また、骨盤底筋トレーニングほど効果はないが膣コーン、電気刺激療法、磁気刺激療法などがあることは知っておこう。