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女性下部尿路症状診療ガイドライン
ガイドラインの推奨グレードは以下の通りである。
そもそも、腹圧性尿失禁の原因は?
咳やくしゃみをすると、おなかに力が入る(腹圧上昇)。
正常であれば、腹圧により膀胱内圧は高くなるが、尿道への圧も高まるため、尿漏れはしない。では、なぜ失禁してしまうかというと、骨盤底筋群が緩んでしまうと膀胱頚部や子宮自体が下がってしまい、腹圧の上昇が尿道に伝わりにくかったり、尿道がグラグラ動いてしまったり、尿道を締める尿道括約筋の働きが弱くなることで漏れる。
出産、加齢、肥満などが関係すると言われているが、私が今回発表する以下の報告では、特に関係性はなかった。
腹圧性尿失禁に対する治療法には何がある?
手術(外科的治療)の種類
③の膀胱頸部スリング療法が侵襲も少なく成績が良好なことから一般的である。TVT(Tension-free Vaginal Tape)とTOT(Tension-free Obuturator Tape)手術がある。膀胱頸部、尿道をスリングで「支える」手術だ。
参考URL:
http://tomo-clinic.la.coocan.jp/styled-3/page44/page44.html
薬物療法で何とかなるの?
④ 交感神経α刺激薬(塩酸エフェドリンなど)著名な効果は期待できないと思っていたほうが良い。
骨盤底筋体操(トレーニング)
女性尿失禁患者に対する骨盤底筋トレーニングと対照群との比較(日本語アブストラクト)
Dumoulin C, Hay-Smith EJ, Mac Habée-Séguin G.Pelvic floor muscle training versus no treatment, or inactive control treatments, for urinary incontinence in women. Cochrane Database Syst Rev. 2014 May 14;5:CD005654.
骨盤底筋体操は、骨盤底協力の筋力雑用を促し、尿失禁症状を改善させ、QOLを向上させる。コクランシステマティックレビューにおいても腹圧性尿失禁に対する治療の第一選択肢として推奨される。指導のポイントを以下にまとめる。
① トレーニングの目的を理解させる(妊娠・出産・加齢が骨盤底筋群に与える影響)
② 骨盤底筋群の位置を具体的にイメージさせる。
③ 口頭での指導
④ 触診での指導
⑤ 代償運動の注意
⑥ 生活動作への配慮
② 骨盤底筋群の位置を具体的にイメージさせる。
画像引用元:http://acu-mimosa.xsrv.jp/pelvic-floor-muscle-1127.html
これは、とても大切。まずは、尾骨、恥骨、坐骨結節を触診し、そして、骨盤底筋群がどこに位置するかイメージしてもらう。この部分に時間をかけて説明したほうが良い結果に結びつきやすい。
画像引用元:https://1post.jp/1414
③ 口頭での指導
「硬い便を肛門で切るように」
「膣を身体の中に引っ張りこむように」
「おならを我慢するときのように」
「膣で水を吸い上げるように」
「割り箸をお尻で挟むように」
「男性は睾丸を引き上げるように」
「男性は◯ニスを短くするように(射精時は逆に長くするのでイメージしにくい)」
「男性はお尻の穴をしめるように」
「男性はおしっこを止めるように」
「男性は冷たい海に足から順番に入っていくように(これは納得)」
などなど、具体的な表現を用いる。個人差がかなりあるので、その方にあった方法を見つけてあげると良い。
④ 触診での指導
⑤ 代償運動の注意
効果のある姿勢・肢位
論文により差異はあるが、仰臥位、座位、立位、四つ這いなどで試して、一番収縮を意識しやすい肢位を選択する。筋力が弱い人は、仰臥位か四つ這いが良いとされる。しかし、男性・女性ともに尿失禁するときは、立位が多いと思うので、最終的には立位でできると良い。立位の場合は、股関節を内旋させ、殿筋の代償が入りにくい姿勢となると良い。
骨盤底筋トレーニングの頻度・回数は?
その他の治療 バイオフィードバック療法(推奨グレードB)
画像引用元:http://j-1-pro.co.jp/products/bio/myotrac3.php
収縮感覚が得られない場合に、膣内圧計や筋電図などを用いることにより、骨盤底筋群の収縮を触覚、視覚、聴覚を利用して確認しながら骨盤底筋体操を行うもの。尿失禁保有者は、力をいれていないときでも、収縮してしまう方が多いので、そのあたりを、バイオフィードバック装置を使用し、確認しながら行う。
ひめトレ(収縮感覚が低下している方)
丸めたタオルやストレッチポールをお尻に挟むことで、収縮がわかりやすくなる方もいる。今のところ、amazonや楽天からでは買えませんね。
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その他の治療 膣コーン(推奨グレードC1)
画像引用元:http://www.yc-tsu.jp/kounenki/2/main.html
プラスチックで成型されたタンポン型の錘である。それぞれ重さが違う。膣内にコーンを挿入し、コーンが落ちないように骨盤底筋群を収縮しながら歩くことで、骨盤底筋群の収縮を触覚的に確認することができる。長時間の使用には注意が必要。
その他の治療 電気刺激療法(推奨グレードB)
画像引用元:http://www.jinyoukai.or.jp/hinyouki/uromaster.html
本邦では、干渉低周波療法のみ保険適応となっている。電気刺激によって骨盤底筋群の収縮を促すことで、尿失禁の改善を図る。
その他の治療 磁気刺激療法(推奨グレードB)
画像引用元:http://www.nihonkohden.co.jp/iryo/products/tmu/tmu1100.html
作用機序は電気刺激療法と同じであるが、着衣のままで、椅子型の刺激装置に座るだけで、神経や筋を刺激することができる。 殿筋含め全体的に力が入ってしまうので、同時収縮により改善するイメージ。
⑥ 生活指導
常日頃、失禁を誘発する動作の前には、骨盤底筋群を収縮させる習慣をもつように指導したり、尿意切迫感を感じたときに、収縮と弛緩を繰り返すと切迫感が軽減される。
また、座位姿勢も背もたれをしないほうが、骨盤底筋群の筋活動は有意に高値になることから、Upright positonを保つように意識させる。さらに、トレーニング日誌を配布したり、行動変容に変化を表す工夫も必要だろう。
また、減量(推奨グレードA)、飲水指導(推奨グレードB)、禁煙(推奨グレードC1)、激しい運動、重労働の軽減(推奨グレードC1)、便秘の改善(推奨グレードC1)。
リスク管理として、実際に排尿を止める練習は、残尿感を増やしてしまうため行わない方がよい。
これまでの尿失禁に関する記事
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大内 みふか先生
重田 美和先生
田舎中 真由美先生
フランスワーズ先生
松谷 綾子先生
平元 奈津子先生
Daniel Kirages
排泄に関わるオススメ本
Women's Health in Physical Therapy (Point (Lippincott Williams & Wilkins))
Evidence-Based Physical Therapy for the Pelvic Floor: Bridging Science and Clinical Practice, 2e
産後リハにおける腹部・骨盤へのアプローチ―腟・会陰部のケア,尿失禁,骨盤臓器脱,会陰・骨盤痛の予防のため...
まとめ
腹圧性尿失禁者に対する理学療法のエビデンスをまとめた。
尿漏れに関していえば、骨盤底筋トレーニングで7割くらいの方の改善が見込める。
しかし、誰でも効果があるわけではない。
まずは泌尿器科を受診することから始めよう。